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ある患者の話

あるがん患者の紹介です。

  神奈川県に住むAさん59歳の男性です。もう20年以上も前からC型肝炎(当時は『非A非B型』と呼ばれた)の治療をしていましたが、月に1度の外来・3ヶ月に1度の超音波検査・6ヶ月に1度のCT画像検査を実施し、肝臓の炎症を抑える点滴と解毒作用のある薬で肝硬変の悪化やがんの発生を抑えてきました。
  しかし、ついに平成12年6月に肝臓に「がんと疑わしき影」が発見されてしまいました。大きさは4ミリ程度と小さかったので暫く様子を見ていましたが、12月の時点で12ミリを超えたためがんであることを想定し、肝生検をし、その後に治療を受けることとなりました。

  3月に入院し、ラジオ波焼灼術を1回、エタノール注入を4回実施して退院しました。しかし、1ヶ月後のCT画像で他の場所にがんが見つかり、再度ラジオ波焼灼術を1回、エタノール注入を4回実施しました。それから1年間は強ミノの点滴とウルソを服用していましたが、翌年2月のCT画像検査でまたがんの再発が見つかりました。
  3月にまた入院し、今度はエタノール注入を5回実施しました。退院1ヶ月後のCT画像検査1年前とまったく同じように他の場所にがんが見つかり、4月に再び入院してエタノール注入を5回実施しました。

  この治療中に、「肝がんを予防する薬」と言われているレチノイドの第1相臨床試験が都内のある病院で実施されていることを知り参加しました。しかし、8ヶ月目に突然として治験が打ち切られてしまいました。そのリバウンドなのか、肝臓内にがんが多発再発し、その病院でエタノール注入を5回、動注化学療を1回行いましたが効果はなく、他病院での治療か緩和治療を勧められてしまいました。

  しかし、がん克服をあきらめないAさんは、様々なことを調べ、肝がんの末期患者に対して臨床試験として行われている「5−FUインターフェロンの併用療法」が効果を上げていることを知り、都内で唯一実施している病院へ電話し、この治療を受けることになりました。効果はてきめんでした。

  4クール終了した時点で、腫瘍マーカーは信じられない数値まで低下し、その後8クールまで継続した結果、薬の届きにくい2ヶ所を除き、肝臓内に無数にあった小さながんは全て消えていました。しかし、この残った2ヶ所が原因で腫瘍マーカーが上下を繰り返していたので、主治医のOドクターは他病院での手術を決断し、しかも腹腔鏡による手術を依頼してくれました。
  手術は13時間30分という長いものでしたが、いずれも約4センチ大の2ヶ所のがんを切除・摘出しました。しかも、その内の1個は「5−FUとインターフェロンの併用療法」があって完全に死んでいました。

  平成16年の9月にK病院で治療を開始以来、ちょうど1年目だったとのことです。肝臓がんは完全に克服され、血液検査でのAFPは170、PIVKA−Uは10以下、CT画像にはがんは写っていなかったとのことです。

  Aさんは、「この治療法が全員に効くとは限りませんが、新しい治療法と病院間の連携でこのように非常に致死率の高い肝臓がんを克服したということを全国の肝がん患者に伝えたい」と話していました。

  しかし、肝臓がんはしつこいもので3ヶ月を経過した時点で再発し、リンパ腺への転移も見つかり、肝動脈寒栓術を受け、更に現在は主治医のOドクターと関連のある国立T大学附属病院で分子標的治療薬の治験に参加しています。
  Aさん曰く、『死ぬまで生きるんだ!』をモットーにして果敢に歩んでいます。

  こんな患者もいるということが少しでも参考になればと想い、紹介をいたしました。

【Aさんのその後】
平成18年2月から分子標的薬の治験開始
  ・腹痛(副作用)が強く、救急車で運ばれたこともあった。
  ・膵臓に膿胞が出現し、急性膵炎の疑いで緊急入院 (結果的に膵炎ではなく3週間で退院したが、
   食事制限により13日間で体重が13キロも減少し、体調不良に陥る。)
  ・主治医に退院を申し出て、退院して体調の回復を図る。
平成18年8月に治験打ち切り
  ・打ち切り理由はがんの増大
平成18年9月に大量下血 (精密検査をするも出血箇所と原因は不明)
平成18年9月  免疫治療のために採血
平成18年9月  FMP療法開始 (副作用がかなり強いが効果があると確信)
平成18年9月  第1回目の活性化リンパ球を静注
平成18年10月 第2回目の活性化リンパ球を静注
平成18年10月 第2回目のFMP療法
※FMP療法−フルオウラシル(5−FU)・ミトキサントロン・シスプラチンの3種類併用で
 臨床試験レベルで実施しており、対象患者の制限がある。



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